オトナの秘密基地
これならば、征二さんとの約束を破ったことにはならないと考えた上での行動だった。

戦争が終わったら、預金封鎖と新円切り替えが始まり、それによってハイパーインフレが引き起こされる。

だからこの時代、国債や預金は持っていても意味がなかったはず。

今の世の中はデフレのため、現金をいかに持っているかが大事だけれど、インフレの時はその逆。

貨幣はあっという間に紙切れになるから、モノや不動産で持っていた方が得になる。

それで、さっきまでカツヤと外に出て、防空壕の中へ不動産の証書や貴金属をこっそり埋めていたところだった。

あの防空壕は、現代も残っている安全な場所だから。


子どもの頃、秘密基地として遊んだあの場所の隅っこに、丸い穴があったのを思い出した。

私たちはそこをお風呂だと見立てて、ごっこ遊びを楽しんだっけ。

……実は、私が掘ったものだったとは。


私とカツヤは、グズベリーをほおばりながら穏やかに微笑んだ。

この静かな生活が、とても貴重なものであることを、私は覚悟していた。

北海道空襲まで、あと3日と迫っていたから……。
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