オトナの秘密基地
「カツヤ隊員!

あそこに洞窟がありますよ。

行ってみましょうか?」


「はあい!」


いつもの防空壕までの道程も、カツヤの気分を盛り上げるための声掛けをする。


「ぼくがあける~!」


カツヤが防空壕の二重扉を開けた時、短いサイレンが鳴り響いた。

空襲警報だった。


「大変です、カツヤ隊員!

ここはひとまず、この洞窟の中に隠れましょう」


「はあい!」


カツヤは自ら進んで防空壕の中に入り込み、私を手招きした。

そういえば、防空壕の中へ叔父の家族がやってくる前に、私はカツヤに話をしておかなければならなかった。

前回のように、カツヤがぐずって彼らを怒らせて『出ていけ』などと言われたら危険だ。
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