オトナの秘密基地
「いいですか、カツヤ隊員。

これからどんなに恐ろしいことがあっても、泣いたり、騒いだりしてはいけませんよ。

カツヤ隊員は、母さん隊長と赤ちゃん隊員をしっかり守ってください」


「はあい!」


元気な返事が返ってきた。


防空壕の奥には、こっそり埋めた我が家の財産がある。

その上に、座布団を敷いて少し横になれるように準備をしていた。

以前、防空壕から出てすぐ倒れたのは『エコノミークラス症候群』の可能性も否定できない。

それを予防するためにも身体を楽にできるように、なおかつ隠したものが見つからないように。

外は空襲、中は遺産相続問題に揺れる一族の骨肉の争いでは、ストレスがたまってお腹の赤子にも悪影響だから。

私はカツヤを膝に座らせて、静かに叔父一家が到着するのを待った。
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