オトナの秘密基地
「知らなかった! うちのラジオ、今調子が悪くてちゃんと聴こえないの」


この頃、ラジオはまだまだ高級品で、そう簡単に買い換えられるものではなかった。


「それじゃあ、家で一緒に聴きましょう」


「有難いわ! お昼少し前にお邪魔させてもらうね」


その言葉を聞いて、とても安心した。

陣痛が来た時、私とカツヤだけでは対処できないと思っていたから。

和子さんは出産経験があるけれど、私自身は全くの未経験。

陣痛がどんなものなのかもわからない。

産婆さんを呼ばなければならないタイミングすら不明だった。


「それじゃあ、この子が産まれない限り、ちゃんと待ってるからね」


「産まれそうになったら、重大発表聴きながら手伝ってあげるわよ!」


「わあ、そう言ってもらえたら、とっても心強い!」


本当はビビりまくりだけれど、仕方がない。
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