オトナの秘密基地
ラジオからはまだ、政府の発表が続いていた。

「うちの人、もうすぐ帰ってくるよね?」


南方の戦場へ行った旦那さんを想って、毎日護国神社へお参りしていた幸子さん。

南方ではほとんどの兵隊さんが、厳しい戦闘の末還らぬ人となっていることを知らない彼女に、何と言おうかと考えているうちに、また陣痛の波が来る。

お腹をさすって楽な姿勢を取ろうと思った。

その場にへたり込んで、汗をぬぐう。


「和子さん、大丈夫?」


「大丈夫、じゃ、なくなってきたかも。

私、奥の間に移動するから……」


「解った。産婆さんを呼んでくるから、ちょっと待っててね。

ケイコとカツヤくんは、ここで遊んでいなさい」


「はい! カッちゃん、なにしてあそぶ?」


「ん~と、おすもうさんごっこ!」


こうして戦争が終わったという感傷に浸る間もなく、お産が始まってしまった。
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