オトナの秘密基地
第五章
帰還
……何とかできないのか!
……博矢、待てって。手出し無用だ。下手にお前が動くと、戻れなくなるぞ。
頭上で、男の人の大きな声が響いている。
中田さんとマスターだ。
ということは、戻ってきたんだ、私。
早く目覚めて、二人に伝えなきゃ。
だけどまだ、思うように体が動かない。
神経回路が繋がらず、耳だけが機能している、そんな感じだった。
「博矢が見た、お祖母さん……ええと、中に入ってんのは和実ちゃんだけど……のピンチって何だったんだ?」
「最初は、流産しそうになった時だ、多分」
マスター、お前が見たって言った?
中田さん、もしかしたら私が「中の人」だった時の和子さんの様子が見えたの?
……もしかしたら、私が見たのと同じ、和子さんが見ていた風景のことだろうか。