オトナの秘密基地
私が何とか目を開こうとしていたその時、マスターが手をぱん、と打って、一気にしゃべり出した。


「そうか! お前、目と耳と口が働かなくなっただろ?

それはきっとお前の親父さんがピンチに見舞われた回数だ」


言われてみたら、そうかも。

中田さんのお父さんがピンチに陥るたびに、感覚を失って存在が危うくなっていったという捉え方もできる。


「ピンチをほっといたら存在ごと消えるところだったけど、それを防ぐことで感覚も戻ってきたって事だと思うぞ」


「成程。じゃあ、俺が元に戻ったのなら、彼女もこっちへ戻って来ていいんじゃないのか?」

……実はもう、戻って来てますと言いたいのに、まだ体が動かない。


「まだ目覚めないのは変だな。

……博矢、キスで起こしてみたらどうだ?」
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