オトナの秘密基地
瞼に力を込めて、何とか開こうと努力する。

ひくり、と動いた目の淵に、涙が溜っていたことに初めて気付いた。

そのまま勢いよく目を開けてみると、両方の瞼から雫が流れる。

ようやく開いた目に映ったのは、メタリックフレームの眼鏡と、長い睫毛。

驚いて、丸くなった瞳。

頬に流れた雫を、指で優しく拭われた。


「どこか、痛いところはないか?」


初めて私にちゃんと話しかけてくれた、中田さん。

どうだった、とか、結果を気にするより先に私の事を気遣ってくれたのが嬉しい。


「……どこも、痛くない、です」


かすれた声になったけれど、ちゃんと話もできた。

中田さんは、ほっとしたような表情で頷いた。


「君が無事なら、良かった。心配したよ」


「……でも、胸が痛いです」
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