オトナの秘密基地
和子さんがどんな想いで、私と征二さんとのやり取りを見守っていたか。

死ぬと分かっていて、征二さんを送り出した私の行動をどう思ったか。

和子さんが見たのは、何て残酷な風景だったんだろう。

それを考えると、胸を締め付けられるような痛みに、感情に、また涙腺が緩む。


「胸、というより心が痛いんだろ?

でも君は、常に最善の方法を考えていた。

こうなったのは、君のせいじゃない」


優しく、もう一度囁かれた。


「和実は何も、悪くないよ」


その言葉を聞いて、はっとした。

以前にもそう言われて、ますます泣いたことがあったような。

中田さんの表情が、また険しくなった。


「俺の事、覚えてない、か……」


こんなイイ男、一度会ったら忘れないと思うのに、私の記憶にはなかった。


「……ごめんなさい」
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