オトナの秘密基地
中田さんが、少しだけ寂しそうな顔をして私の頭を撫でた。


「仕方がないか。

まあ、まっさらな状態になりたい気持ちも、ちょっとわかるし」


「……?」


何の事を言っているのか、本当にわからない。

まっさらになりたい、ということは、以前、中田さんと私の間で何かあった?

また、頭を撫でられた。

何だか、子どもを相手にしているようなその仕草が気になる、けど。

大きく響く足音と共に、咳払いが聞こえてきた。


「あ~、お取り込み中のところ、申し訳ないんですが、そっちに荷物置いてるから入ってもいい?」


和室の向こう側で、マスターから遠慮がちに声をかけられる。


「どうぞ」


……そうだった、まだマスターもいたんだっけ。
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