オトナの秘密基地
「え、名前?

……和実、小学生まで住んでたアパート、覚えてる?」


「うん、もちろん」


ここに家を建てるまで、我が家はあの秘密基地のそばにある3DKのアパートで暮らしていた。


「和実がお腹にいる時からそこに住んでたんだけどね、その時の大家さんと一緒に考えたの。

とても親切にしていただいたのよ。

大家さん、女の子が産まれたら『和実』っていう名前にしたかったんだって」


その言葉を聞いて、中田さんと私は顔を見合わせた。

もしかして!


「その大家さんって、中田和子さんっていう名前じゃなかった?

大正の終わりか、昭和の初めごろに生まれた方で……」


お母さんも驚いている。


「あら、何で知ってるの?」
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