オトナの秘密基地
やっぱり!

中田さんが、後の説明をしてくれる。


「中田和子は、私の祖母です。

戦後、いくつかのアパートやマンションを経営して生計を立てていました。

あの辺りの3DKのアパート……ハイツベリーでしょうか?」


ハイツベリー……確か、そんな名前のアパートだった。

近くには、グズベリーの樹がいっぱい植えられている、緑に囲まれたアパート。


「そうそう! そこに住んでいたんですよ。

私達もまだ若くてお給料も少なかったから、お家賃を安くしてくれたり、畑で採れたお野菜をいっぱい分けてくれたりして、本当にいい大家さんでした。

和実のことも、とっても可愛がってくれて、和実もよくなついてたの。

それを見て『こんな女の子を育ててみたかった』って言ってたんですよ」


そっか。和子さん、産まれる前から私の事を知ってたんだ。

しかも、名付け親だったなんて。

また、中田さんと目を合わせた。

私が和子さんのお気に入りだった理由が、これでなんとなく分かった。
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