オトナの秘密基地
「ちょっと、見てみるか」


マスターは何かの呪文を唱えながら、目の前に置いてある水晶玉を凝視している。

これって、本当に見えるんだ!!

私には部屋の内部が映っているだけに見えるけれど……?

食事が終わった私達は、水晶玉の前で姿勢を正した。


「その正っていう男の見たままを言うぞ。

紙の束を持って、どこかの窓口で言い争っている。

多分銀行じゃないか?」


うわあ、心当たりが……。


「それは、戦時国債を払い戻そうとしてあまりの価値のなさに怒ってる様子かも」


私がそう言うと


「うん、それっぽい。

えらい剣幕で怒ってて、銀行から追い出されたぞ」


その様子を聞いて、ちょっとだけ気の毒に思った。
< 229 / 294 >

この作品をシェア

pagetop