オトナの秘密基地
「桜もはっきり言ってやりなさいよ。

こういう男、一番苦手なタイプじゃなかったっけ?」


麗華はさらなる攻撃を桜に求めた。


「ほら、そこにいるの!

面と向かって……って言っても見えないだろうけれど、いると思ってツッコんで!」


そう言って何もない壁を指さして、にやりと笑っている。

麗華は余裕ありげに見えたけれど……違っていた。

わずかに指先が震え、それを隠すようにオーバーアクションで桜の肩を叩いたのがわかってしまったから。

麗華、かなり必死だ。

見えてしまう彼女にとっては、この修羅場って恐らく相当おっかないはず。

部屋の奥を見たら、呪文を唱えるマスターの額にも玉の汗が見える。

桜を見たら、彼女にもそれが伝わったらしく、私に向かって目配せしてきた。
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