オトナの秘密基地
桜は、何も見えない壁に向かって、きっぱりと言い切った。


「相手を尊重することができない、あなたみたいなタイプは結婚に向いてないの。

自分が一番大事、働きたくない、嫌な事からは逃げたい、悪い事は全部他人のせいにするような旦那が、家族を守れると思う?

……前言撤回、自宅警備員も無理ね」


きっついなぁ……。

こんなに言いたい放題で大丈夫!?

ヒヤヒヤしながら桜の姿を眺めたら、背後に黒いオーラが見えたような気がして、ドキッとした。

怖い。

桜は怒らせたら仲間の誰よりも怖い。


「でも、あなたも色々と苦悩したのね。

愛して欲しかった、寂しかった、欲しいものが何一つ手に入らない人生だった……。

その悲しみの中で、あなたは他人を恨むことでしか自分の存在価値を見いだせなかったのね」


あれれ、話の方向がいきなり予想外。

先程とは違い、口調はとても穏やかで共感しているような話しぶり。

桜は私の方をちらっと向いて、こっそりウインクした。

何か企んでいるらしい。
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