オトナの秘密基地
……桜が、壁に向かって真剣に話しかけている。


「このまま悪行を重ねたら、来世はノミとかダニになっちゃうかもね。

私達も、友達が不幸になるのを見たくないし。

誰も幸せにならないその活動、このまま続けるの?

あなたにとって、どちらが得?」


そ、そう来たか。

きっと正さん、今まで正しい道はどれなのかも考えることなく、怨霊になったはず。

第三者から客観的な意見を述べられて、正さんはどう思っただろう。

さっきより、幾分落ち着いた様子の麗華が、ぽつりと言った。


「怨霊は確かに怖いよ。

でもね、一番怖いのは生きてる人間なの。

人間と比べたら怨霊の影響力なんて、大したことない!

生きていて直接関わるから、裏切るし、嘘をつくし、暴力も振るう。

あたしだって何度も嫌な目に遭ったけど、その度に強くなった。

強くならなきゃ、母ひとりで子ども二人なんて、育てられないもの。

女のあたしにもできたんだから、あんたにだってできるって!」
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