オトナの秘密基地
最後は、励ますような口ぶりで、麗華が壁側に近寄った。

そして、また優しく語りかける。


「うんうん、そうだよね。

今までずっと怨霊だったから、どうすれば怨霊をやめられるのかわかんないのね。

マスターが何とかしてくれるから大丈夫」


説得が、うまくいってるらしい。

何となく、空気が軽くなって、あたたかみを感じる。

それを待っていたかのようにマスターが呪文をやめて、正さんに語りかけた。


「誰かの役に立つっていうのは、恨むことよりずっと嬉しいことだ。

お前さんが徴兵逃れしている間、みんなは必死に愛する人達のために戦った。

誰も好きで行った訳じゃねえよ。

自己犠牲の精神と名誉のため頑張った男達のお蔭で、この国は今、平和だ。

この平和を維持しなきゃって思うのは、尊い犠牲の上に成り立っていることをみんな知ってるからだ。

俺の祖父も予科練の出身で、出征する前に終戦を迎えたクチだけどな。

だからこの店の名前もNavyなんだよ」
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