オトナの秘密基地
小学校の遊具は、低学年には結構スリリングなものも設置されていた。
遊具のてっぺんまで登ったのはいいけれど、降りられなくなった私を抱っこして降ろしてくれた事があった。
怖くて半べそかいていた私だったけれど、抱っこしてもらったのが嬉しくてニヤついたら、会長に
『このスカポンタン! 落ちたらどうするんだ!』
って言われて軽くげんこつされたっけ。
二十年以上経った今は、遊具じゃなくて彼の車に乗るっていうのが未だに信じられない。
私の車よりずっと座面が高いランクルの助手席から見える風景は、いつもと違う輝きを放っている。
……いや、店を出る少し前に雨が降っていたから、路面が濡れているせいだ。
断じて恋する乙女心が復活したせいではない!
そこまでロマンチックにはなれない微妙なお年頃だという事を思い出して、思わず笑ってしまう。
ついでにそんな年になるまで男っ気のほとんどなかった自分が、どんな風に見られているのか気になった。
「どうした、酔っ払い。思い出し笑いのネタは何だ?」
そう言いながら、中田さんは私の方へ手を伸ばしてきた。