オトナの秘密基地

テストが終わった解放感と、はじめての彼氏が出来た喜びと、これから始まる夏休みに浮かれていた私は、彼に乞われるまま、自宅に招いた。

ひとり暮らしの小さな部屋に、彼がいるっていうだけでもう、ふわふわと浮き足立っている自分を可笑しく思いつつ。

彼が家から持ってきたDVDを一緒に見て、そろそろ夕飯の準備をしなくちゃならない時間となり。

まさかいきなり彼が来るなんて思ってもみなかったから、寂しい冷蔵庫の中身で何とか作れそうなものを大慌てで考えた。

その結果……炒飯程度しか作れなかった。

しかも気合いを入れすぎたせいか、卵もひき肉もぱさぱさ、ご飯はところどころ焦げてしまうという残念な仕上がり。

彼はそれでも一応、美味しいと言ってくれたけれど、落胆の色がにじみ出た表情から、それがお世辞であることは明らかだった。

そんな微妙な雰囲気のまま、彼はそそくさと帰って行った。

ムードも何もない、ただ

「それじゃあ」

とだけ言い残して。

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