オトナの秘密基地
こういう場合、自分がチーズが好きで、これをどうしても食べたかった、というように値段に関係なく選んだ事をアピールしておけばまだマシだったというのに。
当時の私は、相手の機嫌を損ねてばかりの自分に、ただおろおろするばかりだった。
夏の暑い時期にふさわしい、冷たいものを頼めば良かったと思いながら、熱々のドリアをふーふーと冷ます。
そんな事があったものの、表面上は楽しく語りつつ、チーズドリアを美味しく頂いた。
しかもレストランを出てからすぐ
『今度は俺のおススメのDVDを見ないか?』
と言われてまた舞い上がった。
まだ見捨てられていない事に嬉しくなって、しっぽを振って彼のアパートへついて行ったのだった……。
「ね、痛々しい思い出ですよね……」
「……いや、誰だってそういう過去はあるんだって。おい、和実、もしかして酔って目が回ってるのか?」
「えっ! いや、そうじゃなくて。何だか中田さんを直視できないくらい恥ずかしいというか何というか」
「ふうん。今更?」
ぎくり。