オトナの秘密基地
「いやいや、和子さんはそんなところで韻を踏んでアピールするような人だったとは思えないんですけれど!」
「黒い服を着て行ったら線香の匂いがした、なんていうのも、ばあちゃんがやりそうなことだ。昔からいいお香や変わった線香を集めることが好きだったからな」
「はぁ……」
「とにかく! 和実は何も悪くない。バケモノ呼ばわりもこれで終わり! そしてばあちゃんはもし今も様子を伺ってるならそろそろじいちゃんのところへ戻っても大丈夫だ!」
また、私の頭上を見ながら話しかけているように見える。
まさか、私には見えないけれど、中田さんには和子さんの姿が見えるの?
「……もしかして、和子さんがまだ見守ってくれているっていうことですか?」
おそるおそる、聞いてみた。
「そうだ。ばあちゃん、まだいるんだろ? もう大丈夫だから。和実はもう、俺の嫁になる。そうだよな?」
じっと見つめられる。その距離、僅か十センチ。
「そそそうみたいです」
コクコクと頷くしかできない。
だって、こんなに近いところで、迫力いっぱいに迫られているのだから。