オトナの秘密基地
なのに、中田さんは私の答えに納得できなかったらしく。
「曖昧にしないこと。これはもう、決定事項だから。そうだよな、ばあちゃん?」
また、私の頭上に目線を向けて、家族写真を見つめている。
和子さんを納得させるため、そしてもちろん、これからの二人のため。
「中田さん」
注意を今一度私に向けてもらう。さっきよりさらに縮んだ距離に緊張しながら言った。
「私を嫁に貰ってください」
「……喜んで」
その時、フォトフレームが音もなく倒れ、伏せられた状態になった。
まるで、分かったから征二さんのところへ帰るわ、とでも言うように……。
「……今の、やっぱり」
「ああ、いたんだろうな」
二人で顔を見合わせて、ふふふっと笑った。
「やるなばあちゃん。俺に何としても和実と結婚して欲しかったっていう訳か」
「そう、なりますか?」
私の問いには答えず、中田さんは私のビールグラスを取り上げ、思い出のテーブルの上に置いた。