オトナの秘密基地
「結果的にその思惑通りになった訳だから、感謝しないとな」
中田さんとの距離がどんどん縮まり、大きな手が私の頭を支えた。逃げ場がなくなった私は、ただ固まるだけ。
「和実は俺とこうなる運命だった」
ガチガチに固まる私の耳元で囁かれる。それだけでもう、自分の顔が火照り、心臓がありえない速さで脈打つのを感じて……。
そっと、中田さんの唇が重ねられた。最初はおでこ、頬、それから唇に。
子どものようだったそれは少しずつ、大人びた行為へと変化する。
「怖くない?」
レンズ越しに見える中田さんの眼が、私を捉えて離さない。
やや細められた眼とその表情から、気遣いが見られた。
だから私も勇気を出して告げる。
「ごめんなさい……怖いです。この歳になっても、こういう時、どうしたらいいのかわからないんです」