オトナの秘密基地
「私の友達も、ここへ毎日来て祈ってたせいか、とっても安産でね。

……ご主人は戻ってこなかったけど、立派に子ども二人を育て上げたんだよ。

きっと若旦那さまが、ここで護っていてくださったんだろうね」


おばあちゃんの話はまだ続く。


「うちの人も、南方から帰って来たのが遅かったから、若旦那さまも、遅くても必ず帰ってくると思って待ってたのに……」


「お母さん、ほら、困っておいでですよ」


「だってケイコ、ちゃんと若い人に伝えないとみんな忘れられちゃうんだよ……」


娘さんから声を掛けられて、しぶしぶおばあちゃんは話をやめた。

最後にひとこと。


「お二人さん、末永く幸せに暮らして、家族を大事にしてちょうだいね。

ここにいる神様は、みんなそれを願ってますからね。

どうか忘れないで……」
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