オトナの秘密基地

貯金あり、彼氏なし

愛車のエンジンをかけて、パンフレットに記載されている住所をナビに入れてみる。

あれ、ここはもしかしたら。


確信を持てないまま、車を走らせて現地へ行ってみると……やっぱり。

そこはかつて、秘密基地としてよく遊んだ場所だった。

あの、防空壕があったところが整地され、その付近に新しい住宅が建てられているのは知っていたけれど、まさかここだったとは。




「……いかがですか?」


「素敵なお部屋ですね。

ひとりで住むには勿体ないくらい」


「もうご契約頂いたお客様の中には、ご夫婦でお住まいになられる方も多いですよ」


にこやかな女性の営業さんは、私に張り付く訳でもなく、他のお客さんの相手をしながら、適度に説明してくれた。

そのくらいがちょうどいい。

多分、本気だと思われていないせい、だろうけれど。

彼氏はいなくても頭金になる程度の貯金はあるのよ、と密かに心の中で呟く。
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