オトナの秘密基地
誰かが必死にあやそうとしているのか、子どものお尻か背中をトントンしている音も聞こえた。
だけど、子どもは泣き止まない。
「早く静かにさせろ!」
苛立った男の声がした。
「すみません。ほら、カツヤ、し~っ!」
父親らしい男の人が、謝りながら子どもをあやすけれど。
「うわああああん」
「全然泣き止まねぇな!」
別の方から、しわがれた男の声も聞こえる。
「どれ、ちょっとこっちによこしな」
女性の声と、衣擦れの音がする。
「よしよし、いい子だから、静かにね」
「ああ~ん、と~しゃ~ん、か~しゃ~ん」
「あれあれ、本物の母さんじゃなきゃダメかい、困ったねぇ」
また、衣擦れの音と共に、子どもが激しく泣いた。