オトナの秘密基地

だんだん暗闇に目が慣れてきて、少しだけ周りが見えた。

どうやらここには、老若男女合わせて、少なくとも10人以上いるらしい。

みんな、息を潜めている中で、泣いている子どもに手を焼いている。

刺々しい雰囲気に包まれた、狭い空間。


ぼんやりとしか見えないけれど、ここは覚えがある。

大人にとっては低い、けれども子どもにとってはちょうどいい高さの天井。

ごつごつとした岩肌。

荒削りだけれど、平らに均された地面。

私が今、横になっているのはここの一番奥。

天井が傾斜していて、子どもでも四つん這いにならないと進めない場所。

……私の、お気に入りの場所。


かつての私が、一番落ち着ける場所だと言って、好んで潜っていたところ。

あの、秘密基地の中だと確信した。

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