オトナの秘密基地

カーゴパンツのポケットを探してみる。

あれ、ポケット、この位置についてたっけ?

肌触りもちょっとざらざらした布地だった。

とりあえず、中を探す。

包み紙が指先に当たった。

小さいものが包まれている感触。

あった!

夢の中でも私は「アメちゃん」を持ち歩いているらしい。

ミヅキの大好物、いちごみるくキャンディで、これがあればしばらくは「お口にチャック」ができるスグレモノ。

狭い空間からのそのそと動いて、みんながいる方へ。

おそるおそる、声をかけてみた。


「ちょっと抱っこしてもいいですか?」

「あれ? あんた、いつ来てたの?」


女の人に、びっくりされた。


「な~んだ、母ちゃんがいるんじゃねぇか」

「え?」

「良かったな、カツヤ。早く泣き止めよ」
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