オトナの秘密基地

父親とおぼしき男性から、ひょいと子どもを渡される。


「か~しゃん!」


それと同時に、ひしっと私の身体にしがみついてくる小さな手。

私、キミの「か~しゃん」じゃないけど、と思いつつも、今否定するのは得策ではないので、とりあえずしっかり抱っこ。


「よしよし、今、おいしいものあげるよ~」


ひそひそと耳元で話して、座って向い合せで抱っこした子どもに、ポケットから出したアメちゃんを見せた。


「ちょ~だい!」


小さい手のひらを重ねておねだりをされる。

包み紙の感触が、何だかいつもと違う気がした。

開けてみると、飴ではないことがはっきりわかる。

表面がツルツルしていて、中は柔らかい。

まるで、ブドウの粒のような感触。

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