オトナの秘密基地

その得体の知れない粒を、小さな指先が摘んでしまった。


「あ、待って!」


慌てて止めたけれど、間に合わない。

その粒は、子どもの口の中に放り込まれた。


「ぐすべり、おいし~」


え、グズベリー?

何で私、グズべりーの実を持ち歩いてた訳?

しかも紙に包んで。


……この「秘密基地」の近くには、野生のグズベリーが沢山あった。

青い実はすっぱくて、しぶくて、でも見つけやすい。

赤い実は野生動物も狙っているせいか、レアだったっけ。

ほどよい甘さで、とろんとした食感が美味だから、一生懸命探した。

よくみんなで収穫して、お腹が痛くなるほど食べたっけ。

飴だと思ったものはグズベリーで、それを何の疑問も持たずに食べてる「カツヤ」の頭をちょっと触ってみたら。

いまどき珍しい、坊主頭のじょりじょりした感触。

いや、もしかしたら、おしゃれ坊主かも。
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