オトナの秘密基地
「カツヤ」の父親、つまり私の旦那様が喋った。
ひそひそ声だとわからなかったけれど、落ち着いた、いい声。
ところで帰るって、家はどこ?
まあいいや、この親子についていけばいいんだし。
話を合わせておこう。
「帰りましょう、カツヤ」
さっきはひそひそ声だったから気づかなかったけれど、いつもの自分の声とは違った響きを感じる。
秘密基地を出たのは、私が最後だった。
私達が遊んだ頃にはなかった、布の覆いと木の扉を閉める。
薄暗い中、はじめて「カツヤ」と父親の姿を見る。
……やっぱり私、戦時中の夢を見ているらしい。
あの秘密基地が、防空壕だった時代の。
「カツヤ」は、おしゃれじゃない、単なる坊主頭で、黒っぽい上下の服。
胸には白い布地が縫い付けられていて、記名されている。
歴史の教科書通りの、戦時中の子どもの姿だった。
ひそひそ声だとわからなかったけれど、落ち着いた、いい声。
ところで帰るって、家はどこ?
まあいいや、この親子についていけばいいんだし。
話を合わせておこう。
「帰りましょう、カツヤ」
さっきはひそひそ声だったから気づかなかったけれど、いつもの自分の声とは違った響きを感じる。
秘密基地を出たのは、私が最後だった。
私達が遊んだ頃にはなかった、布の覆いと木の扉を閉める。
薄暗い中、はじめて「カツヤ」と父親の姿を見る。
……やっぱり私、戦時中の夢を見ているらしい。
あの秘密基地が、防空壕だった時代の。
「カツヤ」は、おしゃれじゃない、単なる坊主頭で、黒っぽい上下の服。
胸には白い布地が縫い付けられていて、記名されている。
歴史の教科書通りの、戦時中の子どもの姿だった。