オトナの秘密基地
『中田 和子』

カズコさんなのね、私。

本名もカズミだし、あまり違和感はないけれど。

カズコさんになりきれない場合は、夢から醒めてしまえばいいんだろうし。

こうなったら、後で話のネタにしよう。

夢の中では干物女じゃなくて、旦那様と可愛い子どもがいたよ、なんてね。


「どうした、和子」


名札をしげしげと見つめる私を不思議に思ったらしい、旦那様が声をかけてきた。

返事をしようとして、考える。

私、この人の事を何て呼べばいいの?

とりあえず、名前を呼ばずにお返事しておこう。


「あ、いえ、ちょっと汚れてしまったので」


「そうか。洗濯も今は石鹸がなくて大変だろう」


そうだった、この時代の石鹸は貴重品。


「ええ。でも贅沢なんて言えませんから」


ちょっと、戦時中の主婦になりきって答えてみたりして。
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