オトナの秘密基地

昭和の女?

当たり前だけど、全部和風な建具。

旦那様が引き戸に手をかけて、玄関を開ける。

鍵はかかっていなかった。

避難する時も絶対に鍵をかける平成の世とは、やっぱり違う。

リビング、ではない、居間とか茶の間という言葉がふさわしい、レトロな空間に入る。

丸いちゃぶ台の上には、空っぽの食器と、湯呑に入ったお茶がそのまま残されていた。

食べ終わるか終らないかのうちに、空襲警報が鳴ってあの防空壕に避難したのだという事がわかる。

一緒にご飯を食べていたはずの和子さんが、どうして一人だけ先に防空壕へ避難していたのか、その辺の事情は謎だけど。

とりあえず、この家の主婦らしく、まずはここのお片づけをしようと思った。


素朴な疑問が、頭に浮かびあがる。

あれ、この時代のここって、水道は整備されているの?

……多分、なかったはずと自問自答。

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