オトナの秘密基地
お財布から自分の名刺を取り出して渡した。


「これが、君?」

というジェスチャー。

「うん」


頷くと、私の全身を値踏みするように眺めた中田さんは、意味ありげに笑い出した。


「もしかして、デパガには見えない?」


大きく頷かれた。


「確かに、この格好じゃ説得力ないかも」


桜からのおススメで選んだ、本気に見えないショールーム探訪のためだったんだけれど、もうちょっとましな格好をすれば良かった。

適当にまとめただけの髪形と、ポロシャツにカーゴパンツ、しかもクロックス。

中田さんは、ネクタイはしていないけれど、ちゃんとジャケットを着ていた。

あまりにもカジュアル過ぎる自分の姿を、本気で後悔した。

いつ出会いがあるかわからないから、と日々気合いたっぷりな麗華を見習わなきゃ。

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