オトナの秘密基地
車に乗って向かった先は、すぐそばにあった一軒家。

かなり大きくて、立派な門には【中田】の表札がついている。

この場所はもしかしたら……!?

間違いない、私が和子さんだった時に住んでいた所だと思う。

もちろん、建て替えられているけれど、門の位置はそのままだった。

中田さんがドアノブに鍵を差し込んでいる間に、また色々考える。


玄関は鍵が閉まっている……ということは、ご家族は誰もいない?

その方が好都合だと思った。

いきなり耳が聞こえない、声が出せない息子を見たら、ご両親は絶対パニックに陥る。

それに、こんな格好の私を家に呼ぶなんてありえない。

この家で二人きりというシチュエーションに、かろうじて残っていた恋する乙女心が復活の兆しをみせた。

どうしよう、緊張する。

残念なことに、彼はそれどころではないのだろうけれど。
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