オトナの秘密基地
テーブルの上に、ぽたりと涙の滴が落ちてしまい、中田さんが驚いた顔でこちらを見た。

すぐにテーブルの隅に置いてあったティッシュを差し出してくれて、とんとん、と背中を優しくたたいてくれる。

背中をとんとんするそのリズムが、カツヤをとんとんしていた旦那様のリズムと同じで、さらに泣けてくる。

だけど「大丈夫だから」と、私は続きを促した。

頷いた彼はまた、言葉を選ぶようなスピードでタイピングをはじめる。


【その時伯父が電話していなかったら、父も死んでただろう。

だから、父にとって伯父は命の恩人だ】


涙を拭きながら、頷いた。


【それじゃあ、話を一旦整理する。

俺が盛り塩を落とした瞬間、君は意識を失ってあの部屋で倒れた。

気づいた時には、俺の祖母として、防空壕に避難していた。

ここまではOK?】


画面から目を離して、中田さんが私の方を向く。

メイクが崩れてぼろぼろの顔を見られたくなかったけれど、彼の顔を見てしっかり頷く。

見れば見るほど、旦那様にそっくりだった。
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