オトナの秘密基地
旦那様と和子さんとカツヤ、3人とそのご先祖様を供養する気持ちに免じて、不作法だったとしても許してくださいね、と心の中で呟く。
紫色のお線香を2本、ろうそくの炎の先端につけて、線香立てに。
リンを2回鳴らして、静かに手を合わせた。
旦那様、和子さん、カツヤ。
どうかお願いです、貴方達の子孫を守って下さい。
そして、安らかにお眠りください。
お参りを終えて座布団から降りると、中田さんも後に続いてお参りをしていた。
ご先祖様のうち、誰かひとりでも欠けると、今の子孫はいなくなるだということを、改めて感じる。
和室の中は、お線香の香りが漂っていた。
畳の感触と、ぽかぽかした日差し、そしてお線香の香り。
もしかしたら、和子さんは晩年をここで過ごしたんじゃないかな、と思った。