オトナの秘密基地
第三章

Maternity mark

割れるような頭の痛みが、嘘のようになくなった。

痛くないって、なんて幸せなんだろうって思った途端、今度は下腹部に痛みが移動した。

さっきの痛みとは種類が違う、重苦しさ。

そう、苦しいんだ、私。


「和子、和子!」


耳元で呼ばれる、私じゃない名前。

目を開くと、すぐそばに中田さんにそっくりな顔。

眼鏡と坊主頭の旦那様だった。

私、また『和子さん』として、ここへ戻ってきたんだ。


「和子、どうした?」


私は旦那様にひざまくらされたような姿で、抱きかかえられていた。

はっとして、自分でお腹をさすってみる。

確かに感じる膨らみは、ここに赤子がいるって事。

さっき見た夢と、同じ風景。
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