Thanks for XX【六花の翼・番外編】
水を汲んで戻ってきた瑛は、ついでに僕のコートを片手にひっかけていた。
「おおきに」
瑛は無言でうなずくと、ベランダ用のイスに腰かけた。
僕も真似をすると、瑛は一言言った。
「目は覚めたか」
目は合わせず、ポケットから出したタバコに火をつけた。
「あぁ、うなされてたか」
「母国語でな。だから内容はわからなかった」
「太一、よう起きへんかったな」
「あいつは飲み過ぎだ」
瑛は苦笑して煙を吐く。
冬の冷たい風に乗って、それは僕の鼻に独特の香りを届けた。
「タバコなんか吸ってたか?」
「いや、これは24、5から。
やめろとは言われてるんだが」
「あぁ……」
さっきの幸せそうなまりあの顔が浮かんだ。
妊婦である嫁と、子供のため、
次いではそれを養わなけりゃならない自分の健康のためか。