Thanks for XX【六花の翼・番外編】
「好きだよ、清良」
昔はあたしを『清良さん』と呼んでいた唇。
その唇が、あたしの唇を塞ぐ。
甘い甘い、太一の味が、あたしの中に広がった。
「俺も、不安だったんだ。
清良、綺麗だし、明るいし……
いつか、他の誰かに盗られちゃうんじゃないかって」
「…………」
だから、飲み会で遅くなったとき、怒ってたの?
「だから、早く俺も一人前になろうと思って、
仕事、頑張ってたんだけど……」
「太一……」
「清良は普通の人と結婚したいのかなって思って、悲しかった。
そんなん、俺、いつまでたっても、ダメじゃん?」
ごめんなさい。
本当は、ほんの少しだけ……。
普通の人との結婚を、夢見てました。
ううん。
普通になった、太一との……。
でもそれは、言わない事にしよう。
「あたし、言ったじゃん。
好きなら、忍者だろうが陰陽師だろうが、関係ないって」
きっと、この方が。
あたしの、現在形。
「うん」
太一は、犬のような顔で。
にこりと、笑った。