Thanks for XX【六花の翼・番外編】
「清良……」
「太一……」
心当たりがあるのは、一回。
喧嘩直前の、あたしがべろんべろんに酔っ払った夜……。
「もー、限界だって言うのに、
清良が降りてくれなかったからだよ?
おじさんに何て言ったらいいのさ」
「あ、あはは……ごめんなさい……」
そう言うあたしの足は、震えていた。
人間って、本当に驚くと笑えるんだね……。
「でもさ」
「はい?」
震えるあたしを、太一は優しく抱きしめた。
「実は俺、嬉しい」
と。
産むのは清良なのに、ごめんね。
きっと、大変だよね、と。
あたしは、もう、涙が止まらなかった。
喜びと、驚きと、
とんでもない重責をいっぺんに拾った夜。
あたしは太一に何度も、
『大好き』
を、伝えた。