Thanks for XX【六花の翼・番外編】
そうして……。
今、俺の前には、
普通の黒髪と黒い目をもった赤ん坊がいる。
最愛の妻は、予想外に過酷な育児に疲れきり、
赤ん坊の隣で寝ていた。
二人目は、まだまだ先だな……。
苦笑して、俺も横になる。
鼻孔に、ふわ、と甘いにおいが届いた。
不意に、あの夏を思い出す。
俺そっくりに変身させた使い魔の両手を、
二人で引いて歩いた事を……。
まさか、あれは予言の一部だったのだろうか。
なぁ、まりあ。
知ってるか?
あの時既に俺は、お前に惹かれていた事を。
自覚したのは、もう少し後だったが……。
あの時は本当にくすぐったくて……
顔をしかめる事で、照れを隠した。
お前は覚えてるか、わからないが。
あれは、あの辛い戦いの中で俺を支えた、幸せな思い出だったんだ。