Thanks for XX【六花の翼・番外編】
「まりあめ……可愛い事言ってくれんじゃん」
「はは……姉ちゃんも当然寂しいとは思うよ?
でもこの町は、あの人との思い出もあるから……
しんどいんじゃない?
そのへんもわかってあげてよ」
……あ、余計なこと言ったかな。
清良さんは途端に眉をひそめてしまった。
「わかってるってば」
「ごめん」
「あーあ、何年も一緒にいたあたしより、結局あのヤリ逃げ忍者の方が、
まりあの頭を占める割合が、大きいってことか」
清良さんは、ぶうと頬を膨らませた。
そんなの、初めて見た。
ちょっと、可愛いかも。
「やっぱりそこかー。
張り合うところが違うでしょ?
ってか、俺より瑛さんを応援してたじゃん」
「そりゃあ、いくら義理でも姉弟は姉弟だもん。
泥沼になるのは目に見えてるし」
「まぁね……」
「まりあが幸せなら、まだ我慢できるんだよ。
けど、そんな、瑛の思い出から逃げるように町を出て行くって言われてもさー……」
手ごろな石をつかみ、清良さんはえいっとそれを境内の方に投げつけた。
罰当たりだなあ、もう。