ポンコツ王太子と結婚破棄したら、一途な騎士に溺愛されました
 しかし、祖国が戦に勝利した以上、むしろユフィーナの人質としての価値は上がった筈なのに、そんなユフィーナを暗殺しようするような気の毒なのーみその持ち主達とこれ以上関わっても、本格的にバカを見るだけだ。

 この国の王宮は、大国の威信だかにふんぞり返っている間に、内側からどんどんダメになっているんじゃないだろうか。

 何にせよユフィーナには、ルードの腹黒宮廷人達の為に大人しく犠牲になってやらねばならない義理など、「夫」への愛情や敬意と同じ位に綺麗サッパリありはしない。むしろそちらが死ねと思う。面倒だからやらないが。

「じゃあ、行きましょうか」

 だから、最初から居場所のなかったこの国から、出て行くと決めた。

 戦など冗談じゃないが、黙って殺されるのも真っ平だ。







「この国の下町料理は、結構美味しかったですわよね。私、卵をソースにするなど考えたこともありませんでしたわ」

「そうね。帰ったらうちの料理人達に色々教えてあげましょ」

「うふふ、ユフィ様がドレッドさんの肉料理のレシピを賭けのカタに取り上げてくれましたし、あの味を帰ってからも楽しめるかと思うと嬉しいですわー」

「ふっふっふ、フィリエおばさんには、娘さんのストーカーを退治したお礼にって、秘伝のマフィンの作り方も伝授してもらったし。街で食べるお菓子って本当、どれも素朴で素敵よね」

 何だかんだ言って、しっかり市井の生活を満喫していたふたりである。

 端から見れば若い侍女が二人、楽しげにお喋りをしながら洗濯物の入った籠を抱え、洗濯場に向かっているの図だ。

 洗濯場の傍には当然用水路があり、その脇の小さな扉は整備の際にしか開かれないのだが、ヘアピン一本で簡単に鍵が開くようなシロモノだ。幾つか確保してある脱出路の中でも、最も簡単な抜け道である。

「そう言えば、ミーア様がご懐妊って本当なのかしら?」
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