ポンコツ王太子と結婚破棄したら、一途な騎士に溺愛されました
すれ違う侍女達の噂話を小耳に挟んだのは、数日前のこと。
どうでしょうね、と首を傾げたニナが、念のため剣と暗器を幾つか忍ばせてある籠を、少し重そうに抱え直す。
ユフィーナの籠にもそれらは入っているが、ニナは少し特殊な暗器を扱い、それが地味に重たいのだ。
「それが本当で、男のお子であられるなら、いずれあの方が王妃様になられるかも知れませんね」
何気なくニナが言ったその言葉に、くすくすと聞こえてきたのは近くで花を生けていた若い侍女達の笑い声。
「あなた方、幾ら王太子殿下がミーア様をご寵愛だからって、王太子様にはちゃあんとしたご正室がいらっしゃるのだもの。そんなことを言ってはいけなくってよ?」
「そうよ、幾らお飾りのご正室でもね?」
「本当、ザカリスでは大層な美女だと褒めそやされていたようですけど、一度も公の場に姿を現さないのですもの。本当はどんなお姿なのか、少し見てみたい気がいたしますわ」
まさか、ニナの陰で大人しく話を聞いている侍女仲間が、その正室だとは思いもしないのだろう。
彼女らは王太子がいかにミーアを寵愛しているかや、結婚式の時でさえ花嫁を一度も見ようとしなかったこと、今までユフィーナの元には一度もお渡りの無かったことなどを、まるで見てきたように喋りまくる。
どこの王宮でも、侍女の噂好きは変わらない。
毎度毎度、どこの子爵が年上の未亡人と不倫しているらしいだの、女好きと名高い何とかいう侯爵が実は男色家だったらしいだの、その相手が騎士団の誰それらしいだのと、全くどこから仕入れてくるのかいつも雑多な話題を提供してくる彼女達だが、こうしてユフィーナのことをあからさまに噂されるのは初めてだ。
最初はにこにこと笑って相槌を打っているニナが、ネタとしてそれらの話を仕入れているのだろうなと思っていたのだが、その額に何時しか青筋が浮いているのを発見し、ユフィーナはぎょっとしてその横顔を伺った。
どうでしょうね、と首を傾げたニナが、念のため剣と暗器を幾つか忍ばせてある籠を、少し重そうに抱え直す。
ユフィーナの籠にもそれらは入っているが、ニナは少し特殊な暗器を扱い、それが地味に重たいのだ。
「それが本当で、男のお子であられるなら、いずれあの方が王妃様になられるかも知れませんね」
何気なくニナが言ったその言葉に、くすくすと聞こえてきたのは近くで花を生けていた若い侍女達の笑い声。
「あなた方、幾ら王太子殿下がミーア様をご寵愛だからって、王太子様にはちゃあんとしたご正室がいらっしゃるのだもの。そんなことを言ってはいけなくってよ?」
「そうよ、幾らお飾りのご正室でもね?」
「本当、ザカリスでは大層な美女だと褒めそやされていたようですけど、一度も公の場に姿を現さないのですもの。本当はどんなお姿なのか、少し見てみたい気がいたしますわ」
まさか、ニナの陰で大人しく話を聞いている侍女仲間が、その正室だとは思いもしないのだろう。
彼女らは王太子がいかにミーアを寵愛しているかや、結婚式の時でさえ花嫁を一度も見ようとしなかったこと、今までユフィーナの元には一度もお渡りの無かったことなどを、まるで見てきたように喋りまくる。
どこの王宮でも、侍女の噂好きは変わらない。
毎度毎度、どこの子爵が年上の未亡人と不倫しているらしいだの、女好きと名高い何とかいう侯爵が実は男色家だったらしいだの、その相手が騎士団の誰それらしいだのと、全くどこから仕入れてくるのかいつも雑多な話題を提供してくる彼女達だが、こうしてユフィーナのことをあからさまに噂されるのは初めてだ。
最初はにこにこと笑って相槌を打っているニナが、ネタとしてそれらの話を仕入れているのだろうなと思っていたのだが、その額に何時しか青筋が浮いているのを発見し、ユフィーナはぎょっとしてその横顔を伺った。