東雲の支配者
その言葉を聞いた瞬間、私は立ち上がり悠太に背を向けた。

「なんで今そんな嘘言えるの？そう言う事で私が喜んで元気になると思った？」

「嘘じゃない！」

「もうやめてよ！悠太が私なんか好きになるわけないでしょ？私、わかるんだから。小さい頃からママが言ってた。私は引き立て役の恥かしい子だって。」

「知ってるよ…。小さい頃から亜夕菜の母さんがそう言ってた事も…。だから亜夕奈が自分に自信が持てない事も。」

悠太が言った一言は、私にとって一番最悪な事だった。
悠太は昔から私の心の中で抑えていた気持ちを見透かしていたんだ。
そう思うと恥かしい気持ちでいっぱいになった。

「俺じゃダメか…？あの日の約束だって、守ってきたつもりなんだけど。俺じゃお前の支えになれないかな？」

「…ごめん。」

「…。」

「悠太は私の事知り過ぎてる。私は知られたくない事でいっぱいで、隠す事で必死だったのに…。」

「…わかんないよ。お前のそういうとこ。」

そう言って悠太は一人公園を後にした。
その後ろ姿は、窶れた野良犬のような悲しさが滲んでいた。
私は思わず目を背け、またものと場所にしゃがみ込んだ。



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表紙・目次

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