東雲の支配者
何がなんだかわからない。
私は未来にでもタイムスリップしてしまったのだろうか。

部屋には布団が敷いていて、私はそれに倒れ込んだ。
酷く疲れていたせいか、そのまま一瞬にして眠りにつく。

そして気が付くと障子の隙間から朝日が射し込んでいた。

「暑い…。」

目が覚めた私は汗だくになっていた。

「お目覚めですか、お嬢さん。」

陽咲が突然部屋に入って来た。

「ちょ、ちょっと。入る前に声かけてよ。」

私は慌てて飛び起きる。

「おはよう。亜夕。」

「おはようございます。」

私は冷めた口調でそう言った。
そのやり取りは、どこか悠太との会話に似ていて無性に心地いい。

「さあ、今日は街を案内する約束だ。そんな格好じゃ暑いから早くこれを着て。」

陽咲は私に薄手のシャツを渡してきた。
私はそれを着るなり陽咲に尋ねる。

「今は6月よ？それなのに今日は真夏みたいに暑いのね。」

「言い忘れてた。この街は一日一日で季節が変わるんだ。昨日が初夏なら今日は解夏さ。」

この人はなにを寝ぼけた事を言っているのだろう。
この日本にそんな街などあるわけがないのに。

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表紙・目次

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