東雲の支配者
「はじめまして、亜夕菜です。」

「エミリ、私はこれから用があって夕方まで戻らないから、その間亜夕をよろしく頼むよ。」

「えっ、ちょっと、今日は一日街を案内してくれるんじゃなかったの?」

私がそう言うと、エミリはまた声を荒げる。

「あんた調子に乗ってんじゃないわよ!陽咲はね、あんたと違って忙しいの!朝から相手にしてくれただけでも感謝しなさい!」

エミリは甲高い声で、いくら怒っている口調でも迫力に欠ける。

「まあまあ。亜夕、夕方迎えに来るからね。」

「はい…。」

「よし、いい子だ。」

そう言うと陽咲は私の頭をポンポンと優しく二回叩く。
そのやり取りを見たエミリは私を睨みつける。
それにしても、陽咲を虜にしている人と間違われるなんて迷惑にもほどがある。

陽咲が小屋を後にすると、しばらく沈黙の時が流れた。
私は居た堪れず口を開く。

「あの…。ここの東雲草は本当に綺麗だね。全部あなたが育ててるの?」

私がそう言うと、今までむすっとしていたエミリの顔が少し和らぐ。

「全部私一人でって訳じゃないわ。毎日のようにデーテの所から子供達が来て水やりを手伝ってくれるから。」



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