東雲の支配者
「陽咲が愛する亜夕の事をそんな風に悪く言わないで!」

エミリは突然怒り出す。

「陽咲はね、あなたが来るのをずーっと前から待ってたのよ?叶うはずのない恋だと知りながら、あなただけを見続けてきたのに…。さっきの発言撤回してよ!じゃなきゃ陽咲が悲しむわ…。」

「わかった、ごめん。撤回するから、ねっ?」

エミリは私を上目遣いで睨む。
そして…。

「ならいいわ!ねえ、亜夕の絵も見せてよ!」

「えっ、嫌だよ、恥ずかしい!」

「いいじゃない!下手でも笑わないわ!ほら早く!」

そう言うとエミリは私のスケッチブックを強引に取り上げた。
そして私の絵をまじまじと見ている。

「亜夕…。この絵にはどうして色がないの?」

エミリは悲しそうな顔でそう言った。

「私、苦手なの。こんなに沢山の色鉛筆があると、どれをどんな風に使ったらいいのかわからなくなっちゃって。」

「いいのよ、亜夕が思ったように色を付ければ。白黒じゃせっかく綺麗に咲いてくれた東雲草達が可哀想。」

その言葉はなぜか私の胸に染み渡っていくような気がした。

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