東雲の支配者
男がそう言った瞬間、会場内は爆笑の渦にのまれた。
言った本人も涙を流して笑っている。
もちろん私は少しも笑えなかった。
こんな酷い話を聞いて大笑いするなんて、みんなどうかしてる。
そう思った次の瞬間…。

「なぜ笑わない。こんなに愉快な話を聞いて、楽しくないのか?」

とても低い声で私の背後から話し掛けて来た男は、腰まである黒髪を後ろに束ねた、緑色の瞳をした男だ。

「あなた、誰?」

「俺の名は雨音(あまね)。陽咲の双子の弟だ。」

私は驚きを隠せなかった。
なぜなら、雨音があまりにも陽咲とは真逆の印象だからだ。
けれど顔の作りや背丈は陽咲とよく似ている。

「…こんな哀れな話を聞いて、笑えるわけないじゃない。」

「哀れだなんて、誰が決めた?」

「えっ?」

雨音はそう言うと、突然ステージに上がりマイクを持った。


< 38 / 80 >

この作品をシェア

pagetop